やさしい器

 
いにま陶房 器展

鈴木雄一郎さんの新作リムボウルです。

「やさしい器」について

鈴木さんご夫婦との出会いは、お二人が長野の松本クラフトフェアに出店されていた時、シンプルで美しい器の佇まいに感動し、その場でつい話しかけたのが最初でした。

私が初めて奈良・吉野のいにま陶房を訪ねたのは、それから3年後の2012年のこと。
この時、智子さんは足を引きずりながら杖をついていました。

その1年ほど前、ご主人の雄一郎さんから智子さん急病の知らせを受けました。
脳の病気に冒されて倒れてしまったということ。
しばらくは作陶はおろか、身体の回復のめどもつかない、と。

お会いした時の智子さんはリハビリ中で、未だ半身麻痺が残っているけど、ようやく少しずつ回復している、とのこと。

雄一郎さんの器が目に見えて変化し始めている。
私がそう感じたのはそれから少し経ったころでした。
2014年、雄一郎さんは「やさしい器シリーズ」を発表しました。

やさしい器は、食べ物をすくう際、外に逃げにくく作られています。
親指を縁に、器をテーブルに置いて使う時、
なるべく手を添えやすい丸みと高さになるよう工夫されています。
高台は安定感があり、安心してお使いいただけます。
少し手が不自由な方や、まだ食器を使い慣れていないお子様にも使いやすい器です。

智子さんの病をきっかけに「より使いやすい器を」と、
そんな思いで作りはじめ、幾度の試作を繰り返しなら改良されてきた、やさしい器シリーズ。
器づくりに携わる人の深い愛情と研鑽の結果がここにあります。